インピンジメント症候群とは?
肩を動かすたびに痛みが走る、夜中にズキズキして眠れない…。
そんな症状に悩まされていませんか?
もしかすると、それは「インピンジメント症候群」のサインかもしれません。
放置すると慢性化したり、肩の可動域が制限されたりすることもあります。
インピンジメント症候群とは?
「インピンジメント」とは英語で「衝突」という意味です。
肩関節で骨と筋肉(腱や滑液包)が繰り返しこすれ合うことで炎症が起こり、痛みや可動域制限が生じる状態を「インピンジメント症候群」と呼びます。
特に多いのが、肩の使いすぎや加齢による変性が原因で、スポーツ選手がスポーツ活動に支障をきたすだけでなく、家事や仕事など日常生活で肩を酷使する中高年の方にもよく見られます。
棘上筋腱板は血行の乏しい部分があり、使いすぎると腱板損傷や断裂をきたすことがあるので注意が必要です。
インピンジメント症候群の症状
以下のような症状が見られる場合、インピンジメント症候群の可能性があります。
- 肩を特に外側から上げる動作で痛みが出る(60~120度の範囲)
- 夜間痛(寝ている間や仰向け時に肩がうずく)
- 肩の前側や外側に鈍い痛みが続く
- 腕を後ろに回しにくい(エプロンのひもを結ぶ、背中をかく動作が困難)可動域が狭くなったと感じる
- 肩の違和感
「腕を上げると痛いが、下げると和らぐ」という症状は特徴的です。
インピンジメント症候群の検査
診断には以下のような検査を行います。
問診と視診・触診
痛みの部位、スポーツや仕事内容、発症時期、どの動作で痛みがでるのかなどを確認します。
整形外科的テスト
肩を特定の方向に動かすことで痛みの有無を確認します。
Neer テスト(肩を内旋させた状態で腕を前方にあげ、肩の痛みが出るかを確認するテスト)
Hawkins-kenndy テスト(肩を90°に屈曲させ、内旋させた際に痛みが出るかを確認するテスト)
など肩の腱や滑液包に炎症や圧迫が生じているか評価します。
画像検査
- X線検査
肩関節の骨の形状、骨棘の有無、肩峰や鎖骨の異常、石灰沈着の有無など骨の異常があるかをcheckします。 - 超音波検査(エコー)
リアルタイムで肩の軟部組織の動きや状態を評価し、腱板損傷や程度や肩峰下滑液包の有無、上腕二頭筋腱の炎症等を確認します。 - MRI(磁気共鳴画像)検査
必要に応じて、MRIを撮像します。腱板損傷・断裂の程度や滑液包の腫れ、関節唇、筋肉や靭帯損傷の評価を正確に把握できます。
インピンジメント症候群の治療
インピンジメント症候群の初期治療は肩の安静です。
肩の過度な使用や負担を減らすことで、炎症や腱板への圧迫を軽減します。
症状の程度により、保存療法と手術療法があります。
薬物療法
痛みの軽減目的に、消炎鎮痛剤(NSAIDs)や漢方薬内服および湿布等の外用薬を使用します。
注射療法
関節内に炎症が波及している際は、関節内注射を施行します。
肩峰下滑液包部に水腫がたまって炎症が波及している場合には、肩峰下滑液包部にステロイドや麻酔剤等を使用します。
また棘上筋内等に石灰が存在しそれによるいたみの場合は同部位に注射をします。
エコーを活用しながら行います。
リハビリテーション
運動療法は、インピンジメント症候群の治療に非常に有用です、肩周りの筋力強化、肩甲骨周囲の筋肉のバランスを改善し、肩関節の安定性が増します。
トレッチは、肩関節の柔軟性を回復させ、可動域を広げるために役立ちます。筋力強化運動では、肩甲骨や肩のインナーマッスルを鍛え、肩の負担を軽減し、痛みの予防や再発防止に有用です。
また体幹トレーニングを強化し、正しい姿勢を維持することで肩周りの筋肉や関節のバランスが整います。症状が強いときは、薬物療法や注射療法を併用することにより運動療法の手助けになります。
患者さんによって症状は様々です。症状に応じたリハビリは、理学療法士にご相談いただけると幸いです。
手術療法
保存療法で症状の改善が見られない場合手術を考慮することがあります。
インピンジメント症候群に対する手術の一つは、関節鏡視下手術です。肩峰の一部を削り、腱板と肩峰の間に空間をつくることで、腱板の圧迫を取り除き、衝突を回避します。
腱板断裂が合併しているときは、腱板修復術を施行します。
早めの受診が大切です
インピンジメント症候群は、初期段階で適切に治療すれば回復しやすい疾患です。
一方で「ただの肩こりだと思って放置していたら、肩が上がらなくなってしまった」というケースも少なくありません。
特に40代以上で肩の違和感が続く方、スポーツや重作業で肩をよく使う方は、早めに整形外科を受診し、原因を明らかにしましょう。