松葉杖の正しい使い方と注意点を解説
はじめに
松葉杖は、骨折・捻挫など片足の痛みが強く、歩行ができないときに使用する杖です。
基本的に使用前に使い方をお伝えしていますが、事前に知っておくことで、スムーズに使えるかと思います。
また、帰ってから使い方を忘れてしまったなどもあるかもしれません。
そういうときにはこの記事を参考にしてみてください。
① 松葉杖の設定方法
松葉杖の長さは、身長-約40~41cm(高齢者で猫背などがある場合などは避けます)または、脇と松葉杖の間が指2~3横指分または拳1個分くらいの高さが適切な長さと言われています。(図1‐a.b.c)
この隙間(図1‐b.c)がない場合は脇を圧迫してしまい、しびれが出てしまう場合があります。
また、脇との隙間がない場合、脇を支点にして体が回転してバランスを崩すか・バランスを崩した際に松葉杖が脇から外れず、体が松葉杖とともに前方に転倒する可能性があるため、注意が必要です。
ポイント
- 松葉杖は脇と腕でしっかり挟むようにして保持します。
(しっかり挟んでないと松葉杖が脇から外れてしまう事があり、転倒の原因になります。) - グリップの高さは基本的には大転子(股関節の横あたりにある少し出っ張った骨)の高さに合わせ、少し肘を曲げた位置にします。(右図)
※ただし腕の筋力が弱く、松葉杖の支持が不安定になる場合は肘を伸ばした時の手の高さにグリップを合わせることもあります。 - 杖をつく位置としては前方15cm・外側15cmです。
② 起立・着座の仕方
起立の際
グリップをしっかり把持し、立ち上がります。
その後、松葉杖を脇に挟みます。(図3‐a.b.c)
先に脇に挟んでしまうと松葉杖での支持が難しく、立ち上がりにくいです。
着座の際
脇から松葉杖を外してから座ります。(図4‐a.b.c)
外してないと脇で引っ掛かり、転倒の原因になるため注意が必要です。
③ 歩行の仕方
免荷での場合は、松葉杖と怪我していない足でバランスを保つようにし、怪我をしている足はつきません。
歩行の順番
- 手順1:松葉杖を同時に前に出します。(図5‐a.b)
- 手順2:体重を前方の松葉杖に移し、怪我していない足を前に出します。(図5‐c)
※画像は右足が怪我をしている足。
注意点
免荷での二本の松葉杖で歩行するのは不安定であるため怪我している足を地面より高くあげることはせず、転ばないように気をつけます。
杖を前方に出し過ぎないようにします。
杖を前方に出し過ぎることで体重が松葉杖に乗りにくくなり、転倒の危険性があります。
また、勢いよく前方に振り出さないように注意します。
基本的に健側は松葉杖よりやや前方に出る位置にしますが、高齢者・不整地等で足元が悪い場合等は転倒のリスクもあるため、健側の脚と揃えるように松葉杖をつきます。
荷重について
部分荷重は、通常は1/3荷重・1/2荷重を行います。
まずは練習で体重計を使い、荷重量を確認しながら指導を行います。
例として、体重60kgの人が1/3荷重となった場合、20kgは体重を怪我している足にかけ、残りの40kgは、松葉杖を使って腕の力と怪我していない方の足で支えることになります。
一般的な歩行の順番
- 手順1:杖を前に出す。(図6‐a)
- 手順2:怪我している足を前に出す。(図6‐b)
- 手順3:怪我していない足を前に出す。(図6‐c)
※特に体重をかける際は痛みに注意して行うことが大切です。
※画像は左足が怪我している足。
④ 階段昇降の仕方
平地歩行と比べてより腕の筋力が必要であり、バランスを崩して転倒する危険性が高いです。
慣れない場合は行わないようにします。
また、危険性が高い場合でも必要な場合は松葉杖を使用せず、手すりを使用してもらう方が安全です。
階段の順序
- 昇る時:怪我してない足(図7‐a.b)→松葉杖・怪我している足(図7‐c.d)
- 降りる時:松葉杖・怪我している足→怪我してない足
昇段時(左が怪我している足)
降段時(左が怪我している足)
⑤ 松葉杖に関しての注意点
松葉杖の杖先はゴム製のために非常に滑りやすくなっています。
そのため雨の日などの外出の際は転倒に注意が必要です。
特に屋外ではマンホールの上や白線・タイルの上などは要注意です。
また、介助が必要な場合は怪我をした脚の斜め後ろで付き添うようにします。
転倒しそうな場合は、両脇に松葉杖を抱えたままだと手を着けず、顔面から転んでしまうため、必ず松葉杖を手離した状態で両手をフリーにして手が付ける状態にします。
やり方に関してご不明な点等ございましたら、理学療法士まで相談ください。